【1級技能士が解説】射出成形の射出圧力とは?速度との違いを解説

射出成形の射出圧力について、速度との違いや決め方を1級技能士が解説するアイキャッチ画像 射出成形

こんにちは。

1級技能士のゆーじです。

本記事の数値・手順はあくまで参考値です。実際の作業では機械メーカー指定値・社内規定を必ず最優先にしてください。内容の適用による損害について、当サイトは責任を負いかねます。

成形条件10項目の中で、射出速度とセットで語られるのが射出圧力です。射出速度の記事では「まず速度を3秒以内を目安に決める」という考え方を紹介しました。この記事では、その次のステップである射出圧力について、速度との違いを中心に解説します。

この記事のポイント:射出圧力は「速度を実現するための上限」。速度の設定値まで実際の波形が出ていなければ、それは圧力不足のサインです。

射出圧力とは

射出圧力(一次圧)とは、樹脂を金型に押し込む際にかけられる圧力のことです。射出速度が「どれだけの速さで樹脂を流すか」という設定であるのに対し、射出圧力は「その速度を実現するために、どこまで力をかけてよいか」という上限の役割を持ちます。

射出速度との違い

この2つは新人が最も混同しやすい条件です。速度を上げれば充填が速くなると思いがちですが、圧力の上限が足りていなければ、設定した速度は実際には出ません。速度はあくまで「狙い」で、圧力はその狙いを実現できるかどうかの「余力」だとイメージすると分かりやすいと思います。

私も新人の頃は、「速度を上げれば充填不足は直る」と思っていました。しかし実際は、圧力が足りていないせいで、設定した速度そのものが出ていなかっただけ、という経験を何度もしました。

圧力が足りないとどうなるか

射出圧力が不足していると、設定した速度通りに樹脂を押し込めず、次のような症状につながります。

  • ショートショット:樹脂が末端まで届かず、製品の一部が欠けたようになる
  • ボイド:圧力不足で樹脂が十分に行き渡らず、内部に空洞ができやすくなる
  • 充填バランスの乱れ:多数個取りの金型で、キャビティごとに充填量がばらつく

私の経験では、ボイドは射出速度よりも射出圧力との関連が強い印象があります。速度の設定はそのままで、圧力を見直すことでボイドが改善したケースもありました。

圧力が過剰だとどうなるか

逆に圧力をかけすぎると、必要以上の力で樹脂を押し込むことになり、次のような症状につながります。

  • バリ:金型のパーティングラインなどから樹脂がはみ出す
  • 金型・設備への負担:過剰な圧力が継続的にかかることで、金型や機械への負担が大きくなる

射出圧力の決め方:波形を見て判断する

私は、射出圧力を波形(モニター画面に表示される速度・圧力のグラフ)を見ながら決めています。射出速度の設定値まで、実際の波形がきちんと出ているかを確認し、設定値まで届いていなければ、それは圧力不足のサインだと判断します。

例えば、設定速度が50mm/sなのに、実際の速度波形が30mm/sまでしか出ていない場合は、圧力不足の可能性があります。このように、設定値と実際の波形にギャップがないかを見るのが基本です。

ゼロから圧力を決める場合は、まず機械の最大設定値の半分程度の数値から始めることが多いです。例えば最大圧力が200MPaの機械であれば、100MPaあたりを起点にして、波形を見ながら調整していきます。最初から上限近くに設定すると、必要以上の圧力がかかる可能性があるため、私は半分程度から始めています。これはあくまで私が起点として使っている目安であり、機械や樹脂、製品によって適切な値は変わります。必ず機械メーカーの指定値や社内規定を優先してください。

まとめ

射出圧力は、射出速度を実現するための上限という役割を持つ条件です。速度の設定値まで波形が出ていなければ圧力不足、逆にバリや金型への負担が出ているようであれば圧力過剰を疑います。ゼロから決める場合は、機械の最大設定値の半分程度を起点に、波形を見ながら調整していくのが基本的な考え方です。

速度の決め方については射出速度の記事を、切り替えのタイミングについてはV-P切換の記事を、条件を一から立ち上げる手順は条件出し10ステップを、そのほかの不良については不良対策まとめも参考にしてください。

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