【1級技能士が解説】射出成形の条件出し|正しい順番10ステップと失敗しないコツ

射出成形の条件出しは順番が重要。型締力→型温→樹脂温度→背圧→スクリュー回転数→射出速度・射出圧力→射出時間(充填時間)→V-P切換→保圧→冷却時間までの正しい流れを1級技能士が解説するアイキャッチ画像 成形条件・技術解説

本記事の数値・手順はあくまで参考値です。
実際の作業では金型メーカー指定値・社内規定を必ず最優先にしてください。
内容の適用による損害について、当サイトは責任を負いかねます。

成形現場で働く皆さん、今日もお疲れ様です。

1級技能士のゆーじです。

射出成形の条件出しは、「順番」が最も重要です。

本記事では、私が14年間の現場経験と技能検定で培った「条件出し10ステップ」を紹介します。

新人の頃の私は、条件出しを行き当たりばったりで進めていました。

樹脂温度を変えてはヒケが出る。
次は保圧を変えてバリが出る。

そんな堂々巡りを何度も繰り返しました。

今振り返ると原因は単純です。

条件を触る「順番」が決まっていなかったから。

この記事では、私が実際に現場で実践している迷わない条件出しの順番を、理由とあわせて詳しく解説します。

この記事の結論

条件出しで迷ったら、次の10ステップで進めてください。

  1. 型締力確認
  2. 型温
  3. 樹脂温度
  4. 背圧
  5. スクリュー回転数
  6. 射出速度・射出圧力
  7. 射出時間(充填時間)
  8. V-P切換
  9. 保圧
  10. 冷却時間

冷却時間を設定したあとに、クッション量や連続ショットを確認して最終判断を行います。

条件出しは「一方向」に進めるのが鉄則

条件出しでよくある失敗が、前後の条件を行ったり来たりしながら調整してしまうことです。

しかし実際は逆で、前工程を固めたら基本的には戻らず、前へ進むのが鉄則です。

  • 型温を決めたら戻らない
  • 樹脂温度を決めたら戻らない
  • スクリュー回転数を決めたら戻らない
  • 速度を決めたら戻らない

もちろん最終調整で微修正することはあります。

しかし初心者のうちは、「前工程を固めてから次へ進む」という意識を持つだけで、条件出しの迷子になりにくくなります。


なぜこの順番なのか【条件出しフロー図解】

10ステップを一気に見ると複雑に感じますが、役割ごとに分けると非常にシンプルです。

土台を作る

  • 型締力
  • 型温
  • 樹脂温度
  • 背圧
  • スクリュー回転数

流れを作る

  • 射出速度・射出圧力
  • 射出時間

充填を決める

  • V-P切換

品質を決める

  • 保圧

生産性を決める

  • 冷却時間

土台が決まらなければ流れは作れません。

流れが決まらなければ充填は安定しません。

充填が決まらなければ品質は安定せず、品質が安定しなければ生産性も上がりません。

この積み上げの関係を理解すると、「なぜ順番を守る必要があるのか」が自然と理解できます。

10ステップと役割の対応表

順番 工程 役割
型締力 土台をつくる
型温
樹脂温度 可塑化条件を決める
背圧
スクリュー回転数
射出速度・射出圧力 充填条件を決める
射出時間
V-P切換 充填完了を決める
保圧 品質を決める
冷却時間 生産性を決める

ステップ1:型締力・金型の確認

条件を触る前に、まずは金型が正しく取り付けられているかを確認します。

  • 型締力
  • ノズルタッチ
  • パーティングライン
  • エア抜き

ここを飛ばして条件出しを始めると、あとで「金型が原因なのか」「条件が原因なのか」切り分けられなくなります。

ポイント
条件出しを始める前に、まず設備側・金型側に問題がないことを確認しましょう。

ステップ2:型温の設定

型温は、外観・寸法・収縮率を左右する土台となる条件です。

ここが決まらないと、その後の条件もすべてブレます。

私の場合、技能検定では

  • PS:約40℃
  • PC:約80℃

を基準としていました。

もちろん樹脂によって適正温度は異なるため、必ずメーカー推奨値を確認してください。

型温が決まった状態

  • 外観が安定している
  • 寸法が安定している
  • 数ショット連続で同じ状態になる

この3つを満たしたら、次の樹脂温度へ進みます。

ステップ3:樹脂温度の設定

型温が決まったら、次は樹脂温度です。

樹脂温度が低すぎると、ショートショットやウェルドラインの原因になります。

反対に高すぎると、黒点・ヤケ・シルバーなどの不良につながります。

私が検定練習で使用していた目安は次の通りです。

  • PS:210〜220℃
  • PC:280〜320℃

これはあくまで参考値なので、必ずメーカー推奨値を優先してください。

樹脂温度が決まった状態

  • 黒点・シルバー・ヤケが出ない
  • ショートショットが出ない
  • ウェルドラインが安定している

ステップ4:背圧の設定

樹脂温度が決まったら、次は背圧を調整します。

背圧は、樹脂を均一に混ぜるための条件です。

高くしすぎると樹脂温度が上がりやすく、低すぎると混練不足になりやすくなります。

背圧の役割

  • 樹脂を均一に混ぜる
  • 色ムラを防ぐ
  • 気泡を減らす
  • 計量を安定させる
高すぎる 低すぎる
樹脂温度が上がる 混練不足になる
計量時間が長くなる 色ムラが出る
樹脂劣化の原因 気泡が残りやすい

背圧が決まった状態

  • 気泡がない
  • 色ムラがない
  • 計量時間が安定している
ゆーじ
ゆーじ

背圧は必要最小限が基本です。私は「もう少し上げたい」と思ったところから、一度立ち止まって本当に必要か考えるようにしています。

ここまで決まれば、次はスクリュー回転数を設定していきます。


ステップ5:スクリュー回転数の設定

背圧が決まったら、次はスクリュー回転数を設定します。

スクリュー回転数は、計量時間と樹脂の可塑化状態(混練具合)を左右する重要な条件です。

回転数が速すぎると、せん断発熱によって樹脂温度が想定以上に上昇したり、樹脂を傷める原因になります。

逆に遅すぎると計量時間が長くなり、サイクルタイムが悪化します。

スクリュー回転数が決まった状態

  • 計量時間がサイクルタイム内に収まっている
  • 色ムラ・黒点・気泡が発生しない
  • ショットごとの計量時間が安定している
速すぎる場合 遅すぎる場合
せん断発熱が増える 計量時間が長くなる
樹脂劣化の原因になる サイクルタイムが悪化する
気泡・色ムラが出やすい 生産効率が落ちる
ゆーじ
ゆーじ
私はまずメーカー推奨値から始め、計量時間が安定する回転数を探すようにしています。最初から極端な回転数にすることはありません。

ここまで決まったら、次は射出速度・射出圧力を設定します。


ステップ6:射出速度・射出圧力の設定

ここからが条件出しの中心になります。

型温・樹脂温度・スクリュー回転数・背圧が決まって初めて、射出速度と射出圧力を調整します。

新人が最も勘違いしやすいのが、速度と圧力を同じものだと思ってしまうことです。

射出速度 射出圧力
樹脂が流れる速さ 樹脂を押す力
フローマークに影響 未充填・バリに影響
充填時間を左右する 充填能力を左右する

イメージすると…

  • 速度=走る速さ
  • 圧力=重い荷物を押す力

どれだけ速く走っても、押す力が足りなければ最後まで樹脂は流れません。

逆に圧力だけ高くしても、速度が遅すぎればフローマークやショートショットの原因になります。

ゆーじ
ゆーじ

私はまず射出時間が3秒以内になる速度を目安に設定し、そのうえで射出圧力が十分であるかを確認しています。

速度・圧力が決まった状態

  • フローマークが出ない
  • ジェッティングが出ない
  • 充填バランスが安定している
  • 最大射出圧力に余裕がある

ここまで決まったら、次は実際に何秒で充填しているかを確認します。

▶ 次のステップ
速度の数値だけでは条件は完成しません。
次は「射出時間(充填時間)」を確認し、速度が本当に適切かを判断していきます。

ステップ7:射出時間(充填時間)の確認

ここが今回、特に伝えたいポイントです。

射出速度を決めたら、それで終わりではありません。

私は速度と必ずセットで「射出時間(充填時間)」を確認しています。

速度の設定値だけでは、実際に樹脂が何秒で充填されているのか分からないからです。

射出速度=設定値
射出時間=実際に充填した結果

条件出しでは、この2つを必ずセットで確認しましょう。

なぜ「約3秒」を基準にするのか

私は多くの条件出しで、まず約3秒を目安にスタートします。

もちろん樹脂や製品形状によって変わりますが、最初の基準として非常に扱いやすい時間です。

理由 メリット
速すぎる充填を防げる ジェッティング・ガス焼けの予防につながる
遅すぎる充填を防げる フローマーク・ショートショットを防ぎやすい
調整幅を確保できる 後工程(V-P切換・保圧)が合わせやすい

ただし「3秒」が正解ではない

3秒はあくまで最初の目安です。

例えば、肉厚1mmの薄肉製品と、肉厚5mmの厚肉製品では適切な充填時間は大きく変わります。

3秒はスタート地点。

  • 樹脂の流動性
  • 製品形状
  • 肉厚
  • ゲート位置

これらを見ながら微調整してください。

射出時間が決まった状態とは?

  • 速すぎず、遅すぎない充填時間になっている
  • ショットごとの充填時間のばらつきが小さい

この2つを満たしたら、次はV-P切換位置を設定します。

ポイント

射出速度だけを見るのではなく、実際に何秒で充填しているかまで確認することが、安定した条件出しへの近道です。

▶ 次は「ステップ8:V-P切換位置の設定」です。

充填から保圧へ切り替えるタイミングを間違えると、バリとショートショットの両方に悩まされます。

詳しくはこちらの記事で解説しています。

ステップ8:V-P切換位置の設定

速度と射出時間が決まったら、次はV-P切換位置を設定します。

V-P切換とは、射出(Velocity)から保圧(Pressure)へ切り替えるタイミングのことです。

ここがズレると、どれだけ速度や保圧を調整しても安定した成形にはなりません。

V-P切換の役割

  • 充填率を決める
  • バリを防ぐ
  • ショートショットを防ぐ
  • 保圧条件を安定させる
切換位置 起こりやすい現象
早すぎる ショートショット・ヒケ
遅すぎる バリ・型開き
適正 安定した充填
ゆーじ
ゆーじ

私はまず95〜98%充填を目安にV-P切換を設定し、そのあと保圧を詰めています。

V-P切換が決まった状態

  • バリが出ない
  • ショートショットにならない
  • 充填が安定している

ステップ9:保圧の設定

V-P切換位置が決まったら、保圧の圧力と時間を調整します。

保圧はヒケ・ボイド・寸法安定を左右する重要な条件です。

また、保圧バランスが崩れると収縮差が生まれ、ソリ(反り)の原因になることもあります。

特にゲート側と末端側で密度差が大きい場合は、反る方向から原因を推定できるケースがあります。

保圧不足 保圧過多
ヒケ・ボイド バリ・型開き
寸法不足 応力増加

保圧は最後の仕上げです。

型温・樹脂温度・速度・V-P切換が決まっていない状態で保圧だけ追い込んでも、あとで必ずやり直しになります。

ゆーじ
ゆーじ

新人時代はヒケが出るたびに保圧ばかり上げていました。実際は型温が原因だったことが何度もあります。

保圧が決まった状態

  • ヒケがない
  • ボイドがない
  • 寸法が安定している

ソリ(反り)の場合は、闇雲に条件を変更するのではなく、まず「どちら側へ反っているか」を確認することが重要です。

ソリの本質は「収縮差」であり、反った方向を見ることで原因をある程度絞り込むことができます。

反る方向から原因を推定する考え方については、ソリの記事で詳しく解説しています。

【1級技能士が解説】射出成形のソリ|反る方向で原因特定


ステップ10:冷却時間の設定と最終確認

最後に冷却時間を調整します。

ここでは品質を維持したまま、できるだけ短いサイクルを目指します。

ですが、冷却時間は短いほど良いわけではありません。

製品が十分に固化していない状態で取り出すと、

・反り

・変形

・寸法不良

が発生します。

短すぎる 長すぎる
変形・離型不良 生産性低下
寸法不安定 サイクル増加

冷却時間が決まった状態

  • 離型不良がない
  • 変形しない
  • サイクルタイムに無駄がない

製品の変形を防ぎつつ最短のサイクルタイムを導き出す具体的な冷却時間の決め方については「【1級技能士が解説】射出成形における冷却時間の決め方とトラブル対策」で詳しく解説しています。


良品が出たら終わりではない

初心者が一番勘違いしやすいポイントです。

1ショット良品=条件が決まったではありません。

良品確認フロー

良品確認

5ショット確認

10ショット確認

重量確認

寸法確認

量産開始

連続して同じ品質が出て初めて、「条件が決まった」と言えます。


やってはいけないNG例

NG行動 起こること
速度と保圧を同時に変更 原因が分からない
温度を変えて保圧だけ調整 条件が崩れる
一度に複数変更 再現できない
記録を残さない 同じ失敗を繰り返す

鉄則

1ショットで変更する条件は1項目だけです。


新人とベテランでは確認する順番が違う

新人 ベテラン
ヒケ → 保圧を上げる ヒケ → 型温確認
すぐ条件変更 重量確認
感覚で調整 充填率確認
結果を見る 圧力波形確認
原因が分からない 最後に保圧・速度を調整
ゆーじ
ゆーじ

私は症状が出ても、いきなり条件は触りません。まず原因を絞り込んでから条件を変更しています。

関連記事

  • 保圧の基本と設定方法
  • V-P切換位置の決め方
  • 冷却時間の考え方
  • 射出成形の不良対策まとめ

条件出しチェックリスト

条件出しを始める前や量産開始前に、次の項目を確認してみてください。

  • □ 金型の取り付け・ノズルタッチを確認した
  • □ 型温を樹脂グレードに合わせて設定した
  • □ 樹脂温度をメーカー推奨レンジ内で設定した
  • □ スクリュー回転数を計量時間とのバランスで設定した
  • □ 背圧を必要最小限で設定した
  • □ 射出速度・射出圧力を調整した
  • □ 射出時間(充填時間)を確認した
  • □ V-P切換位置を確認した
  • □ 保圧を設定した
  • □ 冷却時間を確認した
  • □ クッション量を確認した
  • □ 5ショット以上連続で良品を確認した
  • □ 重量・寸法・外観が安定していることを確認した

よくある質問(FAQ)

Q. 条件出しはどこから始めればいいですか?

まずは型締力・金型の状態を確認し、その後に型温 → 樹脂温度 → スクリュー回転数 → 背圧の順で土台を固めるのが基本です。

Q. 射出速度と射出圧力の違いは?

射出速度は樹脂が流れる速さ、射出圧力は樹脂を押し込む力です。どちらか一方だけでは安定した成形はできません。

Q. 条件は同時に変更してもいいですか?

おすすめしません。1ショットにつき変更する条件は1項目だけにすると、原因を確実に切り分けられます。

Q. 樹脂が変わっても順番は同じですか?

基本的な順番は同じです。ただし、型温や樹脂温度などの設定値は樹脂メーカーの推奨値を優先してください。


私が14年間で作った「条件出し5ルール」

  1. 一度に1項目しか変えない
  2. ショット番号を必ず記録する
  3. 重量を測る
  4. 良品条件を保存する
  5. 迷ったら型締力・型温まで戻る
ゆーじ
ゆーじ

教科書には載っていませんが、この5つを守るだけで条件出しの再現性は大きく変わります。私自身、失敗を繰り返した中でたどり着いた現場ルールです。

まとめ|条件出し10ステップ

条件出しは、勘や経験だけで行うものではありません。

正しい順番で条件を積み上げることで、不良原因を確実に切り分けられるようになります。

条件出し10ステップ

  1. 型締力確認
  2. 型温
  3. 樹脂温度
  4. 背圧
  5. スクリュー回転数
  6. 射出速度・射出圧力
  7. 射出時間(充填時間)
  8. V-P切換
  9. 保圧
  10. 冷却時間

この順番を守るだけで、条件出しに迷う時間は大きく減ります。

私自身、この考え方を意識するようになってから、条件出しの再現性が向上し、原因の切り分けも早くなりました。

新人教育や技能検定対策にもそのまま活用できる内容ですので、ぜひ現場で試してみてください。


条件出しで迷ったら、不良原因から探したい方へ

条件出しは不良との関係を理解すると、さらに早く原因を切り分けられます。

射出成形の不良対策まとめはこちら

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フローマークの原因と対策

ウェルドラインの原因と対策

ヒケの原因と対策

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