成形現場で働く皆さんこんにちは。
1級技能士のゆーじです。
フローマークが出た。「速度を上げよう」——私もかつて、同じことをやり続けた。
5%、10%、15%と速くしても改善しない。
原因は金型温度が設定より15℃低かっただけだった。
速度ではなく、温度だった。
その経験以来、私は速度より先に温度を確認するようになりました。
この記事で一番伝えたいことは「原因を切り分ける順番」です。
順番を守れば、無駄な条件変更は大幅に減らせます。
フローマークとは

フローマークとは、射出成形において樹脂が金型内を流れる際に発生する波状・年輪状の縞模様です。
射出速度だけが原因ではなく、金型温度・流動状態・ゲート形状など複数の成形条件が重なって発生します。
本記事では現場での確認順に沿って、フローマークの原因と対策を解説します。
まず不良を見分ける
光に当てて確認する。
銀白色に光るのがシルバー。
光らず縞があるのがフローマーク。
| 不良名 | どこに出るか | 見た目 |
|---|---|---|
| フローマーク | ゲート周辺 | 波状・年輪状の縞 |
| シルバー | 流れ方向の全般 | 銀白色に光る筋 |
| ジェッティング | ゲートの正面 | 蛇行した細い筋 |
| ウェルド | 合流点・穴の周辺 | 直線状の筋 |
不良の正体を確認してから、成形条件の調整に入ること。
確認する順番【判断フロー】

③までで直らない場合は「速度・圧力」より「材料・金型」を疑う。
条件変更を一度止めて、原因の切り分けを行うこと。
症状で絞る診断表
| 症状 | まず疑うこと |
|---|---|
| ゲート付近だけに縞がある | ゲート通過区間の射出速度を見直す |
| 朝一番・冬場だけ出る | 金型温度の実測値を確認する |
| ロット変更後に突然出た | MFR(流れやすさ)の変化を確認する |
| 特定の1ゲートだけに出る | ゲート径の偏り・冷却回路を確認する |
| 速度を上げたらシルバーも出た | 全段一律に高速化している(後述の悪手①) |
発生場所で原因を切り分ける

| 発生場所 | 多い原因 | 最初の一手 |
|---|---|---|
| ゲート付近のみ | 射出速度・ゲート形状・金型温度 | 速度調整から始める |
| 流動末端 | 温度不足・射出圧力 | 樹脂温度と金型温度を確認 |
| 全面・広範囲 | 材料(MFR変化)・乾燥不足 | 材料・環境を先に疑う |
対策① 金型温度の実測値を確認する【最優先】
私は現場でフローマークの相談を受けると、まず温度計を持って金型へ向かいます。
操作パネルは見ない。温度計を当ててから、初めて数字を見る。
設定値より5〜15℃低くなっていることは珍しくない。「突然出た」と感じるケースの多くは、実測値のズレが原因だ。
実話:射出速度を上げ続けた失敗
冬場での量産3週間目。
その日は寒波でとても寒い日でした。
そんな時にABS製部品にフローマークが全数発生。
射出速度を5%、10%、15%と上げ続けたが改善しない。
ふと温度計を当てると、水冷で通常時40℃に対して実測値25℃。15℃のズレ。
冷却水を温調40℃に切り替えたところ、フローマークはその日のうちにほぼ消えた。
成形条件は何も変えていなかった。変わっていたのは環境だけだった。
対策② なぜ「ゲート通過区間だけ」を速くするのか
全行程を速くするとシルバー・ジェッティング・バリ・ウェルドが出る。
射出速度を上げるのはゲート通過区間だけ。
ここを正確に理解することが、条件変更で迷わない核心だ。
樹脂がゲートを通過する瞬間、流れは細い断面から一気にキャビティへ拡散する。
この瞬間に流速が遅いと、スキン層(金型壁面に接して最初に固まる層)が不均一に形成される。
これがゲート付近にフローマークが集中する本当の理由だ。
| 区間 | 速度 | 理由 |
|---|---|---|
| 射出序盤(スプルー) | 低速 | エアを逃がすため。高速だとシルバーになる |
| ゲート通過直後 | 高速 | スキン層を均一に形成する核心区間 |
| 充填終盤 | 減速 | バリ・ウェルドを防ぐため |
まず試すこと:ゲート通過直後の区間だけを5〜10%速くする。
対策③ V-P切り替えタイミングを見直す
切り替えが早すぎると充填後期の流れが失速し、フローマークの原因になる。
1〜2mm単位で「少し遅め」に調整する。
対策④ 樹脂温度を調整する(慎重に)
樹脂温度を上げると流動性が上がりスキン層が安定しやすいが、上げすぎると焼け・ガス・シルバーを引き起こす。
ABSは特に注意。樹脂温度より射出速度の区間制御を先に試すこと。
対策⑤ 金型構造を見直す(最終手段)
| 確認ポイント | 対策 |
|---|---|
| ゲート径が小さい | 拡大・形状変更を検討 |
| コールドスラッグウェルが小さい | 拡大または追加 |
| ゲートが薄肉に正面当たり | 位置変更・サブマリン化を検討 |
| 冷却が偏っている | 冷却回路の見直し |
成形条件の変更を10回以上試して改善が10%未満なら、金型か設計の問題を疑う。
対策別の効果・難易度・リスク一覧

樹脂別の傾向
| 樹脂 | 出やすい条件 | 優先ポイント |
|---|---|---|
| PP | 金型温度低い(25℃以下)・低速射出 | 金型温度を40℃以上に |
| ABS | 流速ムラに敏感。温度上げすぎでシルバー併発 | 速度の区間制御と乾燥管理 |
| PC | 冷却差に敏感。乾燥不足との誤認が多い | 乾燥確認→金型温度の均一性 |
| PA | 吸湿と流速変動の複合 | 乾燥管理が絶対条件 |
| POM | ゲート径が小さいと顕在化しやすい | ゲート径の見直しが最初 |
やってはいけない3大悪手
❌ 悪手① 全段を一気に高速化する
シルバー・ジェッティング・バリ・ウェルドが悪化する。射出速度を上げるのはゲート通過区間だけ。
❌ 悪手② 樹脂温度だけを上げ続ける
ABSやPCは熱劣化が早く、焼け・ガスが発生する。推奨範囲内で調整する。
❌ 悪手③ 乾燥不足を見落とす
シルバーとフローマークが同時に出ている場合は、まず乾燥管理を確認する。
乾燥不足のまま成形条件を変えても改善しない。
現場チェックリスト【保存版】
① 発生状況
- [ ] ゲート周辺のみか、離れた場所にも出ているか
- [ ] 特定のゲートだけか、全数か
- [ ] 今日突然か、前からあったか
② 環境変化
- [ ] 金型温度の実測値を確認したか
- [ ] 材料ロットが変わっていないか
- [ ] 室温・季節の変化はないか
③ 条件調整
- [ ] ゲート通過区間の射出速度を5〜10%上げてみたか
- [ ] V-P切り替えを1〜2mm単位で調整したか
- [ ] 10回以上試して改善10%未満なら設計相談へ
FAQ
Q. フローマークとウェルドラインはどう見分けますか?
フローマークはゲート周辺の波状・年輪状の縞。ウェルドは合流点に出る直線状の筋。発生場所が違えば原因も対策も別物になります。
Q. フローマークは完全にゼロにできますか?
成形条件と金型が最適化されていれば、実用上ゼロに近いレベルまで改善できます。完全消去が難しい場合はシボ加工や塗装が現実的です。
Q. シルバーとフローマークが同時に出ています。どちらを先に対策すべきですか?
乾燥管理を先に確認してください。2つを同時に追いかけると原因の切り分けができなくなります。
Q. 材料を変えることで改善することはありますか?
MFI(メルトフローインデックス)が高いグレードへの変更で改善することがあります。ただし強度・耐熱性が変わる場合があるため、設計部門と確認した上で判断してください。
Q. ホットランナー使用時の注意点は?
ホットノズル温度のズレとバルブゲートの開閉タイミングを確認してください。コールドランナーとは原因が異なるため、同じアプローチでは解決しないことがあります。
現場でフローマークが出たら、私はこう動きます
① 温度計を持つ
まずこれだ。操作パネルは見ない。
② 金型温度の実測値を測る
設定値との差を確認する。5℃以上ズレていれば、そこが原因だ。
③ ゲート通過区間の射出速度を触る
金型温度が正常なら、次は速度。全段ではなくゲート区間だけを5〜10%動かす。
④ V-P切り替えを確認する
それでも残るなら、切り替えタイミングを1〜2mm遅らせる。
私の現場経験では、④までの確認で改善するケースが大半でした。
射出速度から触ることは、ありません。
フローマークは「速度を上げれば直る不良」ではありません。
まず原因を切り分けること。
それだけで無駄な条件変更は大幅に減ります。
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