【1級技能士が解説】射出成形の金型温度とは?決め方と不良への影響

射出成形における金型温度の正しい決め方と実測の重要性・成形不良への影響を1級技能士が解説するアイキャッチ画像 成形不良対策

こんにちは。1級技能士のゆーじです。

この記事のポイント:金型温度は樹脂温度と混同されがちですが、別のパラメータです。金型温度を上げる・下げるだけで、フローマークやジェッティング、ソリなど複数の不良の出方が変わります。この記事では、金型温度の決め方と、上げる・下げるでどう変わるかを、現場の実例をもとに解説します。

本記事の数値・手順はあくまで参考値です。実際の作業では機械メーカー指定値・社内規定を必ず最優先にしてください。内容の適用による損害について、当サイトは責任を負いかねます。

金型温度とは?

金型温度とは、金型そのものの表面温度のことです。樹脂温度がシリンダー内で樹脂を加熱する温度であるのに対し、金型温度は充填された樹脂が冷える速さや、キャビティ表面の転写性に影響する温度です。同じ樹脂温度・射出速度で成形していても、金型温度が変わるだけで不良の出方が変わることがあります。

なお、温調機の設定温度と、実際の金型表面温度が必ず同じとは限りません。冷却水の流れ方や金型構造、設備の状態によって差が出ることもあるため、設定値だけで判断しないことも重要です。

金型温度の決め方

私の場合、金型温度は樹脂グレードの推奨範囲と、これまでの経験値の両方を起点にして決めています。ゼロから条件を決める場合でも、まずは材料メーカーの推奨範囲を確認することを優先しています。

そのうえで、私の現場では推奨範囲の中で低めの条件から確認し、製品の状態を見ながら調整することがあります。ただし、どの温度から始めるべきかは樹脂グレードや製品形状によって異なるため、一律に「推奨値より何℃低くする」とは考えていません。

金型温度を上げると何が変わるか

私の場合、PC透明品のサイドゲート製品で、ゲート口付近のフローマークとジェッティングが両方出る品物を担当したことがあります。この製品は、射出速度を下げるとフローマークが出て、上げるとジェッティングが出るという状態で、速度だけでは解決できませんでした。

そこで金型温度を70℃から80℃に上げたところ、速度を下げた状態でもフローマークが出なくなりました。途中75℃も試しましたが、あと一歩改善しきれない印象で、80℃で安定しました。金型温度を上げることでキャビティ表面付近の樹脂が冷えにくくなり、流動性が保たれたことが影響していると考えています。

金型温度を下げると何が変わるか

逆に金型温度を下げる方向で改善した経験もあります。透明ABS製品で、ショートショット位置付近に気泡がなかなか消えないケースがありました。温調を40℃設定から水冷に変更して確認したところ、結果として気泡が改善しました。

ただし、このときの改善が金型温度だけによるものかは確認できません。外気温や設備環境、実際の冷却状態なども影響するため、同じ方法で必ず改善するとは限りません。

金型温度がズレると気づきにくいトラブルになる

金型温度は、設定を変えていなくても、冷却水の管の取り違えやコックの閉め忘れなどで実際の温度がズレてしまうことがあります。この場合、成形条件を何も変えていないのに不良が急に出始める、という現象になります。

こうした事例はフローマークの記事で詳しく解説していますが、金型温度は「設定値どおりに保たれているか」も含めて確認すべき項目だと考えています。

新人がやりがちな間違い

新人のうちにやりがちなのが、冷却水のコックの開け忘れや、水管の接続間違いです。設定温度自体は正しくても、実際の水が正しく回っていなければ意味がありません。不良が出たときは、設定値だけでなく、実際に金型に水がきちんと通っているかも確認するようにしています。

まとめ

金型温度は、樹脂温度とは別のパラメータとして、フローマーク・ジェッティング・気泡などさまざまな不良に影響します。上げる・下げるどちらが正解かは製品や条件によって異なるため、推奨範囲を起点にしながら、現物の状態を見て微調整することが大切です。設定温度が実際に保たれているかどうかも、あわせて確認するようにしています。

金型温度と冷却時間の関係についてはこちらの記事、フローマークについてはこちらの記事、金型温度とガス焼けの関係についてはこちらの記事、ソリについてはこちらの記事もあわせてご覧ください。また、成形条件全体の入口としては新人が最初に覚える成形条件10項目もどうぞ。

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