【1級技能士が解説】不良の原因を絞り込む判断基準

射出成形の不良原因を絞り込む判断基準を解説するアイキャッチ画像 成形不良対策

こんにちは。

1級技能士のゆーじです。

先日、Xでこんな質問をいただきました。

「不良の原因を絞り込むとき、確認する箇所はルール化していますか?それとも製品の特性によって変えていますか?」

これは、成形現場.techらしいテーマだと感じました。不良対策というと「シルバーが出たら射出速度を確認」「ヒケが出たら保圧を確認」というように、不良の種類ごとにチェックする項目を紹介する記事が多いと思います。

でも実際の現場では、その前段階として「そもそもどこから疑うか」を製品や状況によって変えている、という感覚があります。

今回はこの質問に答える形で、私がどうやって「疑う順番」を決めているかを整理してみます。

この記事のポイント:不良対策には基本の確認順があります。ただし、それを機械的に当てはめるのではなく、製品の形状や不良の出方を見ながら「どこを先に疑うか」を私は変えています。今回は、その判断基準を整理しました。

以前、「射出成形で不良が出たら最初に確認する5項目」という記事を書きました。

あちらは不良が出た直後の初動チェックのための記事です。

今回の記事は、その先の話になります。「いつから発生しているか」を確認して終わるのではなく、その答えをもとに次にどこを疑うのかまで踏み込んでいきます。

本記事で紹介する判断基準は、あくまで私個人の現場経験に基づくものです。

実際の作業では機械メーカー指定値・社内規定を必ず最優先にしてください。

内容の適用による損害について、当サイトは責任を負いかねます。

どこを先に疑うかを決める視点と実例

私の場合、不良が出たときに、まず2つの視点で状況を見ます。

そのうえで、製品や不良の出方を見ながら、どこから疑うかを決めています。

絶対的なルールではなく、あくまで私が現場で意識している目安として読んでもらえればと思います。

①いつから発生したか

私がまず一番に見るのはここです。理由は単純で、ここを見るだけで疑う方向が大きく変わるからです。

昨日まで問題なかったのに今日から急に出た、という場合は、条件・材料・金型・設備のどこかに「変化点」があることが多いと考えて、そこを探します。

ロットが変わった、樹脂の乾燥状態が違う、金型に何か手を加えた、機械のメンテナンスが入った、といった心当たりを一つずつ洗い出していく形です。

逆に、生産を始めた最初からずっと出ている不良であれば、話は変わります。

この場合は「何かが変化した」わけではないので、条件のブレよりも、製品形状やゲート位置、そもそもの基本条件設定そのものを疑うことが多いです。

立ち上げ時点から抱えている問題である可能性が高いからです。

この考え方は、以前書いた「不良が出たら最初に確認する5項目」の中の「いつから発生しているか」の項目とそのままつながっています。

あの記事では初動としてこの質問を挙げていますが、今回はその答えを受けて次にどこを疑うのかまで書いています。

②全数か、時々か

次に見るのが発生頻度です。

私個人の現場での目安ですが、10ショット中2ショット程度なら「時々」、5ショットを超えたら「ほぼ全数」寄りとして考えています。

この頻度によっても、疑う先はかなり変わってきます。

全数発生している不良で、なおかつ製品形状に関わる部分(例えばネジ穴のめくれなど)であれば、私はまず金型側を疑います。

実際にあったのは、ピンの表面がささくれていて、そこが毎ショット製品に転写されていたケースです。

ただし、これも「金型が原因に違いない」と決めつけるのは危険です。

突き出しのタイミングや、取り出し機で製品を掴んで取り出す際に接触して変形している可能性もあるので、候補を思い浮かべたら、一つずつ実際に確認して潰していくようにしています。

一方、シルバーや気泡のような不良は、条件のブレによって時々発生することが多い印象です。

樹脂の乾燥状態や射出速度のわずかなブレ、周囲の温度変化など、ショットごとに条件が微妙に揺れることで出たり出なかったりします。

逆に言えば、金型側に固定的な問題がある場合は、同じ条件で繰り返し発生することがあるので、「毎回同じ場所に同じように出ているか」も、金型由来か条件由来かを見分ける一つの目安にしています。

📋 私が見ている2つの視点

・いつから発生したか →「変化点」を探すか、「基本条件そのもの」を疑うか
・全数か時々か → 金型側の固定的な要因を疑うか、条件のブレを疑うか

③実例:「いつもと何が違う?」から入ったケース

フローマークが出た製品で、射出速度を5%、10%、15%と段階的に上げていっても改善しない、というケースがありました。

フローマークという不良だけを見ると、真っ先に射出速度を疑うのは自然な発想です。

実際、最初は私もそう考えて速度を調整していました。ただ、15%上げても改善の兆しすら見えなかったことで、「そもそも速度の問題ではないのでは」と考え方を切り替えました。

そこで一度「いつもと何が違うか」に立ち返り、金型温度を確認したところ、通常40℃のところが実測25℃まで下がっていました。冬場の水冷却だった為、金型が冷え過ぎすぎてしまっていました。

冷却温度を温調40℃に戻したところ、速度を元の設定に戻した状態でも改善しました。

この件で学んだのは、不良の種類から機械的に「対策される条件」を追いかけるのではなく、いったん立ち止まって「いつもと違う点はないか」を確認する、という視点の大切さです。

結果的に、射出速度だけを追い続けるよりも早く、原因にたどり着くことができました。

④実例:製品・樹脂・不良の出方を見ながら組み合わせて判断したケース

PC透明品で、射出速度を下げるとフローマーク、上げるとジェッティングが出る、という品物がありました。

  • この手の「片方を直すともう片方が出る」というトレードオフの不良は、現場でもよく遭遇します。速度をどれだけ細かく調整しても、フローマークとジェッティングの間の非常に狭い範囲でしか安定しない、という状態でした。

速度だけを調整しても、フローマークとジェッティングの両方を解決できませんでした。そこで、速度以外の要因として金型温度に目を向け、70℃→75℃→80℃と段階的に確認しました。

75℃では改善しきれませんでしたが、80℃まで上げた時点で、速度を下げた状態でもフローマークが解消しました。

「不良Aが出たから条件Aを変える」という一対一の対応ではなく、製品・樹脂・不良の出方を見ながら、疑う先を速度から金型温度に切り替えたケースです。

まとめ:基本の型を、どう使うか

不良が出たら最初に確認する5項目」が不良対策の基本の型だとすると、今回の視点と実例は、その型をどう使うか――原因候補をどう絞り込んでいくか、という部分の話です。

いつから発生したか、全数か時々か、という2つの切り口で疑う方向をある程度絞り込み、そのうえで製品・樹脂・不良の出方を見ながら、条件だけにとらわれず金型温度なども含めて広く候補を見る。

これが、私が現場で実際にやっている流れです。

結果として同じ考え方で改善することもあれば、同じ方法を使っても必ず改善するとは限りません。それでも、製品や不良の出方を見ながら疑う順番を変えていく、という姿勢そのものは、どんな不良にも共通して使える考え方だと感じています。

今回質問をくださった方に、少しでも参考になれば嬉しいです。同じような疑問や、現場で判断に迷った経験があれば、ぜひXやこちらの記事コメントで教えてください。

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