こんにちは。1級技能士のゆーじです。
成形不良を見つけたとき、新人はすぐに「原因は何だろう」と考え始めます。
しかし現場でまずやるべきなのは、原因を推測することではなく、状況を確認することです。
原因の見当を先につけてしまうと、その仮説に都合の良い情報ばかりを拾ってしまい、かえって遠回りになります。
私が不良を見つけたときにまず確認しているのは、次の5項目です。
品物をとりあえずはじき始める前に、この順番で状況を整理してから動くようにしています。
この記事のポイント:不良を見つけたら、原因を探す前にまず「状況」を確認する。原因の見当を先につけると、その仮説に都合の良い情報ばかり拾ってしまい、かえって遠回りになる。
まず確認する5項目
📋 不良を見つけたら、まずこの5項目を確認
| 項目 | 何を確認するか |
|---|---|
| ①いつから発生したか | 突然か、徐々にか |
| ②どこに発生したか | 製品全体か、一部か、特定のキャビティか |
| ③全数か、時々か | 常に出るのか、断続的なのか |
| ④条件変更はあったか | 誰かが条件を触っていないか |
| ⑤材料・金型・設備に変化はないか | 条件以外の変化点 |
不良発生時の初期確認用チェックシートとして、現場で活用できます。

①いつから発生したか
なぜ確認するか:これは「変化点思考」の出発点です。
突然出始めたのか、以前から出ていたのかで、疑うべき原因の範囲がまったく変わります。
何が分かるか:突然であれば、その前後に何らかの変化点がなかったかを確認します。
逆に立ち上げ当初からずっと出ているなら、条件そのものが最初から合っていない可能性を疑います。
私の場合は、まず日報を確認し、次に作業者に直接聞きます。
それでもはっきりしなければ、機械の稼働履歴を見て、最後に品物自体を時系列で追っていきます。この順番で確認すると、記憶や記録の曖昧さに振り回されにくくなります。
新人がやりがちな間違いとして多いのは、「いつからか」を確認せずに、とりあえず品物をはじき始めてしまうことです。日付やロットNoを見ないまま選別を始めると、後から「結局いつから発生していたのか」が分からなくなり、原因の絞り込みがやり直しになります。
まず見る方法を決めてから見る、という順番が大切です。
②どこに発生したか
なぜ確認するか:製品全体に出ているのか、一部だけなのか、特定のキャビティだけなのかによって、金型側の問題なのか、条件側の問題なのかの切り分けが変わってきます。
何が分かるか:全キャビティで同じ症状が出ていれば条件側を疑いやすく、特定のキャビティだけであれば、そのキャビティ固有の金型状態を疑う手がかりになります。
私がまず行うのは、良品サンプルと不良品を並べて見比べることです。
不良の原因を考える前に、「何が違うのか」を明確にします。
製品全体に変化があるのか、一部だけなのか、特定のキャビティだけなのかを見ることで、その後に確認するポイントも変わってきます。
ここで、私が製品を見るときの基本的な考え方も併せて伝えておきます。
私の基準は、「サンプルと同等なら良い」で終わらせるのではなく、サンプルと同等以上の品質を安定して作り、できることなら少しでも良いものを目指すことです。
現実には、すべての製品でサンプルを上回る品質を維持するのは簡単ではありません。
それでも、この基準を持って製品を見るかどうかで、不良の見え方や気づき方は変わってくると考えています。
新人がやりがちな間違いは、不良品だけを見て判断してしまい、良品サンプルとの比較を後回しにすることです。
良品が手元にないまま「なんとなくおかしい」で進めると、判断の基準がぶれやすくなります。
③全数か、時々か
なぜ確認するか:常に出ているのか、たまに出ているのかで、疑うべき原因の性質が変わります。常時性のある不良は条件のズレを疑いやすく、偶発的な不良は材料や環境の揺らぎを疑いやすくなります。
何が分かるか:発生頻度は、原因が「固定的なもの」なのか「変動するもの」なのかを見分ける手がかりになります。
私の場合、10ショット中2ショット程度であれば「時々発生する不良」として見ます。
一方、5ショットを超えるようであれば、感覚的には「ほぼ常時発生している」ものとして扱い、発生頻度だけでなく、連続性やキャビティごとの発生状況も確認します。
これはあくまで私の現場での目安で、絶対的な基準ではありません。
新人がやりがちな間違いは、1個不良が出ただけで「条件が悪い」と決めつけて、すぐに条件を変更してしまうことです。
頻度を確認しないまま条件を触ると、たまたま1個だけ発生した不良なのか、これから増えていく不良なのかを見誤り、不要な条件変更を重ねてしまうことになります。
④条件変更はあったか
なぜ確認するか:不良の発生には、人為的な変化点が関わっていることがあります。誰かが条件を変更していないかを確認することで、原因の候補を絞り込めます。
何が分かるか:条件変更の記録と、実際に機械が動いている現在の設定値が一致しているかどうかが分かります。
新人がやりがちな間違いは、条件表を確認して「記録上は変更されていない」と安心してしまい、実機の現在値そのものを見に行かないことです。条件表は「基準を確認するための資料」、実機の設定値は「現在どう動いているかを確認するための情報」と考えると分かりやすいでしょう。
記録と実機が必ずしも一致しているとは限らないので、最終的には自分の目で機械の現在の設定値を確認する習慣が必要です。
⑤材料・金型・設備に変化はないか
なぜ確認するか:不良の原因は、成形条件だけとは限りません。材料や金型、設備側の変化が原因になっていることも多くあります。
何が分かるか:材料ロットの違いや乾燥状態、金型のメンテナンス状況、冷却水の温度・流量、ヒーターやセンサーなど設備側の状態が見えてきます。
新人がやりがちな間違いは、不良が出るとまず成形条件だけを疑ってしまい、材料や金型、設備側の変化を見落とすことです。条件を何度変えても改善しない場合は、条件以外の変化点を疑う視点も持っておく必要があります。
ケーススタディ:午後から発生した透明品のボイド
ここでは、私が実際に経験したボイド発生の事例を紹介します。
ある箱物の透明成形品で、ボイドが発生しました。立ち上げ後の午前中は問題なく成形できていましたが、午後になってボイドが発生。発生箇所は製品の特定部分で、ショートしている箇所の付近でした。
そこで、今回紹介した5項目に沿って状況を確認しました。
| 確認項目 | 今回の結果 |
|---|---|
| ①いつから発生したか | 立ち上げ後の午前中は問題なく、午後になって発生 |
| ②どこに発生したか | 箱物製品の特定箇所。ショートしている箇所の付近 |
| ③全数か、時々か | ほぼ全数で発生 |
| ④条件変更はあったか | 成形条件の変更はなし |
| ⑤材料・金型・設備に変化はないか | 調査した結果、型温の変化を確認 |
この結果から、私は「成形条件そのものが最初から悪かった」というよりも、午前中は問題なく、午後から不良が発生したという時間的な変化点に注目しました。条件変更はしていなかったため、材料・金型・設備側に何らかの変化がないかを確認したところ、型温の変化が確認されました。
そこで型温調節機の設定を見直し、型温を下げる対応を行いました。さらに射出速度を遅くする調整も加えたところ、発生していたボイドは消えました。
この事例で重要なのは、最初から「ボイドだから保圧を上げる」と決めつけなかったことです。①いつから、②どこに、③全数か時々か、④条件変更、⑤材料・金型・設備、という順番で確認したことで、午前中は問題なく午後から発生したという変化点に気づくことができました。
不良が発生したときは、症状だけを見て原因を決めつけるのではなく、いつから・どこに・どの程度発生したのかを整理し、そこから変化点を探すことが重要です。ボイドそのものの原因や対策については、個別記事も参考にしてください。
まとめ:5項目から原因仮説へ
この5項目は、それぞれを単独で確認して終わりではありません。いつから・どこに・全数か時々か・条件変更の有無・材料や設備の変化、これらを組み合わせることで、原因の仮説が見えてきます。原因仮説が立ったら、可能な限り一度に複数の条件を変えず、変更した項目と結果の関係が分かるように確認していくことが重要です。
不良の原因そのものを詳しく知りたい場合は、不良対策まとめや、ショートショット・ヒケ・ソリなどの個別記事を参照してください。条件を体系的に決めていく手順については、条件出し10ステップの記事も参考にしてください。


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