こんにちは。1級技能士のゆーじです。
新人が最初に覚える成形条件10項目の中でも、射出速度は特に多くの不良と関わる、重要度の高い条件です。この記事では、射出速度の役割と、速すぎる・遅すぎる場合にそれぞれ何が起きるかを解説します。
この記事のポイント:射出速度は「樹脂を金型に押し込む速さ」。速すぎても遅すぎても不良につながるため、製品形状や樹脂の流れやすさに合わせて適切な速さを見極める必要がある。
射出速度とは
射出速度とは、シリンダー内で溶かした樹脂を、スクリューを前進させて金型内に押し込む際の速さのことです。単純に「速い/遅い」だけでなく、多くの成形機では1速・2速・3速のように、充填の過程で速度を切り替える多段設定が使われます。
射出速度が速すぎるとどうなるか
射出速度が必要以上に速いと、樹脂がキャビティ内を勢いよく流れすぎることで、いくつかの不良につながります。
- ジェッティング:ゲートから噴き出した樹脂が蛇行しながら流れ、その跡が製品表面に残る
- シルバー:樹脂がせん断を受けすぎることで、表面に銀条が発生しやすくなる
- ボイド:射出速度が影響する場合もありますが、保圧や製品形状など他の条件も関係する不良です
- ガス焼け:樹脂の流れが速すぎることでガスが圧縮され、排出が追いつかず末端や薄肉部が焼ける
射出速度が遅すぎるとどうなるか
逆に射出速度が遅すぎると、樹脂が金型内で先に冷え始めてしまい、充填自体がうまくいかなくなります。
私の経験では、この「速すぎ・遅すぎ」はどちらも実際に不良として現れます。ジェッティングが出て速度を落として解決したこともあれば、逆にフローマークが出ていて、原因が速度不足だったこともありました。ボイドも、速度を落とすことで消えたケースがあります。同じ「速度を疑う」でも、症状によって上げるべきか下げるべきかが逆になるので、まず今出ている不良がどちらのグループに近いかを見極めることが大事です。
射出速度は製品によって変わる
射出速度の最適値は、製品によって大きく変わります。薄肉製品は樹脂が冷えて固まる前に充填を終える必要があるため速めに、厚肉製品は比較的遅めになることもあります。ただし製品形状や樹脂によって最適値は変わるため、まずはメーカー推奨条件や社内基準を出発点として考えるのが基本です。
射出速度の決め方:まず3秒から
射出速度をゼロから決めるとき、私は「射出時間が3秒以内になる速度」をまず目安にしています。
理由は、たとえ計量値を多めに設定してしまっていたとしても、3秒で射出が止まることで、オーバーパック(樹脂を入れすぎて金型に過剰な圧力がかかる状態)のリスクを減らせるからです。製品サイズによってこの目安を大きく変えることはあまりせず、まずは3秒という基準からスタートし、そこから実際の充填状態を見ながら調整していきます。
速度を決めたら、次に射出圧力が十分に足りているかを確認します。速度だけ上げても、圧力の上限が低いままでは狙った速度が実際には出ていない、ということもあるためです。
「決まった」と判断する基準
射出速度・射出圧力がうまく決まっている状態は、次のように判断しています。
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- フローマークが出ていない
- ジェッティングが出ていない
- 充填バランスが安定している
- 最大射出圧力に余裕がある
特に「最大射出圧力に余裕がある」ことは見落とされがちですが、圧力の上限ギリギリで成形していると、樹脂ロットや金型の状態がわずかに変わっただけで充填不足に転じるリスクがあります。余裕を持たせておくことで、条件が安定しやすくなります。
射出速度と射出圧力の関係
射出速度と射出圧力は混同されやすい条件ですが、役割は異なります。速度は「どれだけの速さで樹脂を押し込むか」という設定であるのに対し、圧力は「その速度を実現するために、どこまで力をかけてよいか」という上限の役割を持ちます。基本的には速度優先で樹脂を流し、設定した圧力の上限に達すると、それ以上速度は出せなくなります。
まとめ
射出速度は、速すぎても遅すぎても不良につながる、成形条件の中でも特に影響範囲の広い項目です。ゼロから決めるときは、まず射出時間3秒以内を目安に設定し、そこから充填状態を見ながら調整していくのが基本の考え方です。今出ている不良がジェッティング・シルバー・ガス焼け系(速すぎ側)か、ショートショット・ウェルドライン・フローマーク系(遅すぎ側)かを見極めることが、調整の第一歩になります。
射出速度と特に関係が深い射出圧力やV-P切換もあわせて確認してみてください。速度と圧力を確認しても不良が改善しない場合、多段速度の切り替え位置がズレていることもあります。新人が成形条件を変更するときの考え方で、実際にあったシルバーの事例を紹介しています。条件を一から立ち上げる手順は条件出し10ステップを、そのほかの不良については不良対策まとめも参考にしてください。

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