こんにちは。
1級技能士のゆーじです。
不良が出たとき、新人がやりがちなのが「とりあえず条件を変えてみる」ことです。
しかも、1つだけでなく複数の条件を同時に変えてしまうことがよくあります。
複数の条件を同時に変えると、たとえ不良が改善しても、どの条件が効いたのか分からなくなります。
逆に改善しなかった場合も、どの条件が的外れだったのかが分からず、次の一手を考えられなくなってしまいます。
この記事のポイント:条件は「思いつきで触る」のではなく、優先順位を決めて、1つずつ変更しながら結果を確認する。同時に複数を変えると、何が効いたのか分からなくなる。
条件を変更する前に、まず現状を確認する
不良が出たからといって、すぐに条件を変更するとは限りません。私の場合、まず「いつから発生したのか」「全数なのか、時々なのか」「条件変更はなかったか」「材料や金型、設備に変化はなかったか」を確認します。
ここを確認せずに条件を触ると、本当は条件が原因ではないのに、条件変更によって別の問題を作ってしまうことがあります。状況を確認する具体的な進め方は、射出成形で不良が出たら最初に確認する5項目にまとめています。
今回の記事は、この5項目で確認したうえで「条件が原因だと考えられる場合」に、どういう順番で条件を見ていくか、という話になります。
条件を変更するときの優先順位
📋 条件変更の基本的な順番
| 順番 | 条件 |
|---|---|
| ① | 射出速度 |
| ② | 圧力(一次圧) |
| ③ | 多段速度の切替位置(特に3速目) |
| ④ | 保圧 |
| ⑤ | 温度系(樹脂温度・金型温度) |
※この順番は、すべての不良に当てはまる絶対的なルールではありません。原因が条件側にあると考えた場合に、私が確認・切り分けをしていく際の基本的な考え方です。不良の種類や発生状況によっては、材料・金型・設備などを先に確認する場合や、この順番が前後する場合もあります。たとえばヒケであれば保圧を先に見ることもありますし、シルバーであれば材料の乾燥状態やガス、滞留など、温度系以外を優先することもあります。
①射出速度
なぜここから確認するか:射出速度は、充填のされ方に直接影響する条件です。他の条件を触る前に、まず速度の設定が今の症状に合っているかを確認します。
何が分かるか:速度が原因であれば、速度だけを変えた時点で症状に変化が出ます。逆に速度を変えても症状が変わらなければ、他の要因を疑う判断材料になります。
②圧力(一次圧)
なぜ確認するか:圧力は速度と密接に関係する条件です。速度を確認したうえで、次に圧力が不足していないか、あるいは過剰になっていないかを見ます。
何が分かるか:圧力不足であれば充填不足系の症状に、圧力過多であればバリなどの症状につながりやすくなります。
③多段速度の切替位置(特に3速目)
なぜ確認するか:ここは新人が見落としがちなポイントです。射出速度は1速・2速・3速というように多段で設定することが多く、その切り替わる位置(タイミング)自体がズレていることがあります。速度と圧力それぞれを確認しても改善しない場合、この切替位置を疑います。
何が分かるか:切替位置がズレていると、各段の速度設定値自体は正しくても、意図したタイミングで速度が切り替わらず、結果として症状が出続けます。
多段速度の設定方法や考え方については、多段射出の記事で詳しく解説しています。
④保圧
なぜ確認するか:切替位置までを確認したうえで、保圧の設定が症状に影響していないかを見ます。
何が分かるか:保圧が不足していればヒケなどにつながりやすく、過剰であれば別の症状につながることがあります。
⑤温度系(樹脂温度・金型温度)
なぜ確認するか:温度系は変更してから結果が出るまでに時間がかかるため、優先順位としては後に回します。また、温度は他の条件の効き方そのものを変えてしまうことがあるため、先に触ってしまうと他の条件との切り分けが難しくなります。
何が分かるか:温度が原因であれば、速度や圧力を変えても改善しなかった症状が、温度の調整で改善することがあります。
「1つずつ変更する」の本当の意味
ここでいう「1つずつ変更する」というのは、すべての状況で必ず1項目しか変更してはいけない、という意味ではありません。不良の状況や原因がある程度絞れている場合には、複数の条件を同時に調整することもあります。
ただし、原因が分からない状態で複数の条件を同時に変更すると、何が効いたのか分からなくなります。特に新人のうちは、原因を切り分けるためにも「まず1つ変更して結果を見る」という考え方を身につけることが重要です。
条件変更後に何を見るか
条件を変更したら、「不良が消えたか」だけで判断しないことも大切です。私が確認しているのは、次のようなことです。
- 不良は減ったか、完全に消えたか
- 別の不良が新たに出ていないか
- 成形サイクルは安定しているか
- 寸法や外観に問題が出ていないか
- 次のショットでも同じ結果になるか
特に注意したいのは、「1ショット改善したから直った」と判断しないことです。1回のショットだけを見て条件を確定してしまうと、その後の変動に気づけないことがあります。何ショットか続けて様子を見てから、条件が合っているかどうかを判断するようにしています。
ケーススタディ:速度と圧力を同時に変えても消えなかったシルバー
ここでは、私が新人の頃に実際に経験したシルバー発生の事例を紹介します。
ある製品でシルバーが発生しました。早く直したいという気持ちもあり、私は速度と圧力を同時に変更しました。しかし、結果としてシルバーは消えませんでした。
自分の中で条件は間違っていないはずだと思っていたので、先輩に相談することにしました。
相談する中で見えてきたのは、多段速度の切替位置のズレでした。この製品は、もともと射出速度の3速目を落とした条件で成形していました。
ところが、型温が安定してくるにつれて樹脂の流動状態が変化し、それに伴って3速目に切り替わる位置にも変化が出ていたのです。
つまり、速度や圧力の設定値そのものは間違っていませんでした。
型温が安定したことで成形時の状態が変化し、以前は問題なかった切替位置が、結果として症状の出る位置になっていたということです。
この経験から学んだのは、条件は一度決めたら固定でいいわけではない、ということです。型温の安定のように、条件表には表れない変化によっても、実質的な条件は少しずつズレていくことがあります。
速度と圧力を同時に変えて改善しなかったとき、次に疑うべきは「多段速度の切替位置そのもの」かもしれません。
まとめ:優先順位を決めて、1つずつ確認する
条件を変更するときは、思いつきで触るのではなく、まず状況を確認し、そのうえで優先順位を決めることが大切です。今回紹介した順番はあくまで私の現場での基本的な考え方ですが、①射出速度→②圧力→③多段速度の切替位置→④保圧→⑤温度系、という流れで1つずつ確認し、結果を評価しながら進めていくと、何が効いているのかを見失わずに済みます。
特に、速度と圧力を確認しても改善しない場合は、多段速度の切替位置そのものがズレていないかを疑ってみてください。
条件は環境の変化によっても実質的にズレることがある、ということを覚えておくと、原因の見え方が変わってきます。
不良が出たときにまず何を確認すべきかについては、射出成形で不良が出たら最初に確認する5項目を、条件を体系的に決めていく手順については条件出し10ステップの記事もあわせて参考にしてください。シルバーそのものの原因や対策はシルバー対策の記事をご覧ください。


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