こんにちは。1級技能士のゆーじです。
前回の記事では、新人が最初の1年でどういう順番に身につけていくといいか、全体の流れを地図としてまとめました。この記事はその中でも、「6ヶ月〜1年」の時期に関わってくる、成形条件そのものについての入門編です。
成形条件と一口に言っても、項目はかなり多く、最初は何から手をつけていいか分からなくなります。この記事では、新人がまず名前と役割を知っておきたい10項目を紹介します。それぞれの詳しい調整方法は個別記事に譲り、ここでは「何のための条件か」を一通り把握することを目的にしています。
この記事のポイント:成形条件は種類が多いが、一度に全部覚える必要はない。まずは10項目それぞれが「何のための条件か」を知ることから始める。
成形条件とは?
成形条件とは、成形機に設定する数値のことです。射出速度や圧力、温度、時間など、成形品の品質を決める要素はすべて条件として設定されています。同じ金型・同じ材料でも、条件が変われば出来上がる製品の品質は大きく変わります。
新人のうちは、これらの条件がそれぞれ何のためにあるのかが分からないまま、先輩に言われた数値をそのまま入力していることが多いと思います。それでも現場は回りますが、不良が出たときに自分で考えて対応できるようになるには、まず1つずつの条件の役割を知っておく必要があります。
新人が最初に覚える成形条件10項目
📋 成形条件10項目 一覧
| 項目 | 役割 | |
|---|---|---|
| 1 | 射出速度 | 樹脂を金型に押し込む速さ |
| 2 | 射出圧力 | 樹脂を押し出す力 |
| 3 | V-P切換 | 速度制御から圧力制御へ切り替えるタイミング |
| 4 | 保圧 | 充填後、樹脂を冷やし固める間にかける圧力 |
| 5 | 保圧時間 | 保圧をかけ続ける時間 |
| 6 | 樹脂温度 | シリンダー内で樹脂を溶かす温度 |
| 7 | 金型温度 | 金型そのものの温度 |
| 8 | 冷却時間 | 製品が固まるまで待つ時間 |
| 9 | 背圧 | スクリューが後退する際にかける抵抗 |
| 10 | スクリュー回転数 | 樹脂を可塑化する際のスクリューの回転速度 |
※この順番は、充填→保圧→温度→計量という工程の流れに沿って並べたものです。覚える優先順位ではありません。
①射出速度
樹脂を金型に押し込む速さです。速すぎるとジェッティングやシルバー、遅すぎるとショートショットやウェルドラインなど、多くの不良に関わる、条件の中でも特に重要な項目です。
速度=走る速さをイメージしてください。
詳しくは【1級技能士が解説】射出成形の射出速度とは?決め方・不良との関係で解説しています。
②射出圧力
樹脂を押し出す力です。射出速度で樹脂を流し、必要になったときだけ射出圧力が補助するイメージです。速度と混同されやすいですが役割は別で、圧力が足りなければ充填不足に、過剰であればバリにつながります。
射出圧力=重い物を押すとき、どれだけ強く押せるかの上限、とイメージしてください。
③V-P切換
充填(速度制御)から保圧(圧力制御)へ切り替えるタイミングです。切り替えが早すぎるとヒケやショート、遅すぎるとバリやオーバーパックの原因になります。
詳しい設定方法はV-P切換の設定方法にまとめています。
④保圧
充填後、樹脂が冷えて固まるまでの間、収縮分を補うようにかけ続ける圧力です。ヒケや寸法安定に大きく関わる条件ですが、入れすぎると別の不良を生むこともあります。
詳しくは保圧の決め方で解説しています。
⑤保圧時間
保圧をかけ続ける時間です。ゲートが固まるタイミングと関係が深く、短すぎると保圧の効果が十分に伝わらず、長すぎても意味がありません。保圧の圧力・時間はセットで考える条件なので、詳しくは保圧の記事もあわせて参考にしてください。
⑥樹脂温度
シリンダー内で樹脂を溶かす温度です。樹脂ごとに適正な範囲があり、低すぎれば未溶融、高すぎれば樹脂の劣化やガス発生につながります。
詳しくは樹脂温度の決め方にまとめています。
⑦金型温度
金型そのものの温度です。樹脂の流動性や製品の外観、収縮のバランスに影響します。金型温度が安定していないと、他の条件を正しく設定していても症状が出ることがあります。
⑧冷却時間
製品が金型の中で固まるまで待つ時間です。短くしすぎると製品が変形したり、寸法が安定しなかったりします。
詳しくは冷却時間の記事で解説しています。
⑨背圧
スクリューが後退する際にかける抵抗です。樹脂を均一に溶かすために必要ですが、上げすぎると樹脂の劣化や、逆に下げすぎると計量の安定性に影響します。
詳しくは背圧の設定方法にまとめています。
⑩スクリュー回転数
樹脂を可塑化する際のスクリューの回転速度です。計量時間や樹脂の溶け方に関わり、背圧とセットで考える条件です。
詳しくはスクリュー回転数の決め方で解説しています。
全部を一度に覚えなくていい
10項目並べると、覚えることの多さに圧倒されるかもしれません。ですが、これを全部一度に覚える必要はありません。
私自身、新人の頃はまず「今、何の条件を触っているか」が分かるようになることを目標にしていました。それぞれの条件が具体的にどう不良と結びつくかは、実際に不良に遭遇しながら少しずつ身についていくものです。まずは名前と役割を知っておくだけで、先輩の説明や現場での指示が理解しやすくなります。
まとめ
成形条件は数が多く、最初はどれも同じように見えるかもしれません。ですが、それぞれ役割が違い、関わる不良の種類も違います。まずはこの10項目の名前と役割を押さえておき、実際に不良に遭遇したときに、どの条件を疑うべきかを考えられるようになることを目指してください。次の記事では、それぞれの条件を「どの順番で触るべきか」を詳しく解説します。
不良が出たときにまず何を確認すべきかは射出成形で不良が出たら最初に確認する5項目を、条件を変更するときの優先順位は新人が成形条件を変更するときの考え方を、条件を一から決めていく手順は条件出し10ステップの記事も参考にしてください。


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